「腎臓に関連する疾患と食事管理」

腎臓に関連する疾患と食事管理――“静かに進行する病気”から愛犬を守るために

「最近よく水を飲むようになった」「なんとなく元気がない」「体重が減った気がする」――
こうした変化、もしかしたら腎臓のトラブルが関係しているかもしれません。
腎臓病は“沈黙の臓器”とも言われ、自覚症状が出にくく、気づいたときには進行していることが多いのです。

今回は、ペット栄養管理士の視点から、腎臓のしくみ・よくある病気・食事によるケアについて、わかりやすく解説していきます。

① 腎臓って、どんな働きをしているの?

腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。
同時に、水分バランス・電解質の調整、血圧の安定、ホルモンの分泌(エリスロポエチン)など、多岐にわたる役割を担っています。

このように腎臓は、“ろ過装置”というだけでなく、全身の代謝に関わる司令塔でもあるのです。

② 腎臓の疾患って、どんな種類があるの?

腎臓の不調には、いくつかのタイプがあります。中でもよく見られるのは以下の通りです。

  • 慢性腎臓病(CKD):長期間かけて腎機能が徐々に低下する。高齢犬に多い。
  • 急性腎不全:急激に腎機能が低下。毒物、脱水、感染、薬物などが原因となる。
  • 尿道結石・膀胱結石:尿路が詰まり、腎臓に逆流圧がかかることで腎機能に悪影響を及ぼす。
  • 加齢による機能低下:年齢とともに腎臓のろ過能力が落ち、水分保持や老廃物排泄が難しくなる。

これらは単独で起こるだけでなく、相互に関係し合いながら進行することもあるため、
「一見軽い症状」が、実は腎臓疾患の初期サインというケースもあります。

③ 飼い主が気づける「サイン」とは?

腎臓病は進行するまで目立った症状が出にくいため、「気づいたときには末期だった」という例も少なくありません。
早期に察知するためには、日常のちょっとした変化に敏感になることが大切です。

  • やたらと水を飲む(多飲)
  • オシッコの量が増える(多尿)/逆に出なくなる
  • 尿が薄い/においが強い
  • 食欲が落ちた
  • 体重が減ってきた
  • なんとなく元気がない
  • 口臭(アンモニア臭)

これらは“サイン”です。ひとつだけでも気になる場合は、獣医師による検査をおすすめします。

④ 腎臓のケアに適した食事とは?

腎臓病の進行を抑えるためには、食事によるサポートが非常に有効です。
以下の栄養設計が重要とされています。

  • たんぱく質制限:過剰なたんぱく質は老廃物を増やし、腎臓に負担をかけます。
  • リンの制限:リンの蓄積は腎機能を悪化させやすく、制限が推奨されます。
  • ナトリウムの調整:血圧管理のため、塩分は適度に控える必要があります。
  • 水分摂取を促す:脱水を防ぎ、腎臓のろ過機能をサポート。

このような設計は、AAFCOや日本ペット栄養学会でもガイドラインとして明示されています。
ただし、病期や年齢、持病により最適な食事は異なるため、必ず獣医師やペット栄養管理士と相談しながら進めてください。

⑤ 検査でわかる「腎臓の状態」とは?

動物病院での血液検査では、腎臓の状態を把握するために以下の数値がチェックされます。

  • BUN(尿素窒素):老廃物の蓄積を示す
  • クレアチニン(Cre):筋肉由来の代謝物。腎臓のろ過能力の指標
  • SDMA:最近注目されている、より早期に異常を検出できるマーカー

これらの数値は、見た目が元気でも異常値を示すことがあります
だからこそ、「気になるけど元気だし…」というときこそ検査が大切なのです。

💬 まとめ:腎臓のケアは、未来の「元気」を守る選択

腎臓病は、静かに、でも確実に進行する病気です。
食事・水分・生活習慣のバランスを整え、早期発見と予防の意識を持つことが何よりも大切です。

「何を食べさせるか」「どこに異変があるか」にいち早く気づけるのは、毎日一緒に過ごす飼い主さんだけ。
腎臓の健康は、ドッグフード選びと“ちょっとした違和感”を見逃さないことから始まります。